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合格者が解説!「酸欠講習」とは
先日、いわゆる「酸欠講習」と言われる講習を受けてきました。
酸欠講習へ行ってきました❗️
農業でも毎年1~4人程度が亡くなるそうです。
穀物貯蔵庫やCO2施肥中のハウス、格納庫での機械整備などが危険⚠️
農業従事者の皆さま安全作業で⛑️ pic.twitter.com/zrTR2wwdn9— ぎんろー🍠銀篭園 (@Ginro_Farm) 2019年2月20日
正式名称は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」という長い名前の講習です。
「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者」とは、トンネルや下水道などの酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業場所に係る作業で、①酸素欠乏等の空気を吸入しないように、作業方法を決定し、労働者を指揮し、②作業を行う場所の空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定し、③測定器具、換気装置、空気呼吸器等その他労働者が酸素欠乏症にかかることを防止するための器具または設備を点検、④空気呼吸器等の使用状況の監視を行う責任者です。
一部抜粋:東京労働基準協会連合会 |
簡単に言うと「酸欠や硫化水素が発生する可能性がある場所で、安全に作業ができるよう指揮監督する主任者」になる為の講習です。
個人でも受講できますが、会社で取得が昇進条件だったりと、参加が推奨もしくは強制されるパターンが多いかと思います。
資格自体は2日間の学科(最後にテスト有り)と1日の実技講習に参加するだけなので、真面目に受講していれば全員が合格できる試験です。
酸欠災害は平成の30年間で徐々に発生件数は減少しているとは言え、毎年数名~10名程度が亡くなっており、被災者数のほとんどが死亡者数で占められている深刻な労働災害です。
業種的にはタンクなどを使用する製造業(メーカー)や地下やマンホール・トンネルなどに関わる建設業などが発生件数が多いですが、農業や水産業に於いても穀物貯蔵庫や受水槽タンク、CO2施肥中のハウス、格納庫での機械整備などで事故が発生しています。
今回、備忘録を兼ねて講習の概要の確認と講習内容を簡単に書き留めたいと思います。今後受講される方、興味をお持ちの方、少しでも参考にして頂けたら幸いです。(※各地域によって違いがあるかと思いますので、あくまで参考でお願いします。)
「酸欠講習」の概要(申し込み・会場・日程スケジュール・服装・持ち物他)
1.申し込み・開催会場
各都道府県ごとに申し込みを受け付けており、各地域の「労働基準協会連合会」が窓口になっているようで、開催場所も連合会の建物です。
私は静岡で受講しましたが、例えば東京などを見ても「1回/月」程度開催されているようです。
インターネットで申し込みが出来る所もあるようですが、申込書の提出が主流のようです。
受講料は各地域で異なるようですが、おおよそ¥10,000~¥20,000程度です。
2.日程スケジュール
学科講習 :2日 / 実技講習 :1日 のトータル3日間の講習となっています。それぞれの詳細は以下ご確認下さい。
(1)学科講習 酸素欠乏症、硫化水素中毒及び救急そ生に関する知識【3時間】 酸素欠乏及び硫化水素の発生の原因及び防止措置に関する知識【4時間】 保護具に関する知識【2時間】 関係法令【2時間30分】 学科修了試験【1時間】 (2)実技講習 A区分: 救急そ生の方法【2時間】 酸素及び硫化水素の濃度の測定方法【2時間】 実技修了試験【1時間】 B区分: 酸素及び硫化水素の濃度の測定方法【2時間】 実技修了試験【1時間】一部抜粋:東京労働基準協会連合会 |
3.服装
基本的に私服でOKですが、一部会社の制服や作業着の方もいらっしゃいました。(消防の方も制服で来ていました。)
特に実技講習の日は救急蘇生法等で体を動かすので動きやすい服装がおススメです。
4.持ち物
・受講票
・筆記用具
※講師の先生がテストに出るポイントを教えてくれるので蛍光ペンがあると良い。また2日目のテストはマークシート形式なので鉛筆・消しゴム必須。
・昼食
静岡の場合、会場内でお弁当の販売も行っていました。(¥500)
近くにコンビニやスーパーがあれば問題ありませんが事前に確認をおススメします。
「酸欠講習」の内容(学科・実技・テスト)
1.学科(1日目)- 丸一日座学
①酸欠の原因・防止策
酸欠のコンサル行っている方が講師でした。(酸欠のコンサルがある事を初めて知りました)基本的にはテキストに沿って、重要な部分をマークしながら話を聞くスタンスです。
どういった場所で酸欠が発生しやすいか、また酸欠を防止するためにどのような対策を取れば良いか、幾つかのケースを基に学習します。
②関連法案・事例
労基連の事務局の方から説明を受けました。労働安全衛生法など、酸欠に関わる法令を学びます。
最後に1日目の学習内容の振り返りと、明日のテストに出るポイントの説明がありました。
講習のどこかでテストの出題例・方式に関する説明があると思いますので特にその部分は注意して聞きましょう。
2.学科(2日目)- 座学+夕方筆記試験
③酸欠の病理と症状
講師の方は某鉄道会社の産業医の方でした。
酸欠や硫化水素中毒になった場合、どのような症状が現れるのかを医学的・科学的根拠に基づいて解説がされます。
④保護具に関する知識
民間企業出身で現在はリタイヤされた方が講師。空気呼吸器や送気マスクなど、事故を防止するための保護具の種類や使用方法に関しての内容です。
※学科は眠くなりがちですが、試験に出るポイントだけは確実に押さえておきましょう。先生からアンダーラインの指示があった時だけ意識を取り戻している方もいました。
3.テスト
学科の2日目は15時頃まで講習を受け、最後に2日間を通した学科試験のテストがあります。
①酸欠の病理と症状、②原因と防止対策、③呼吸用保護具、④関連法令 の 4分野 x 各5問の合計20問のマークシート形式で「イ・ロ・ハ・ニ」の選択形式になっています。
合計で6割、上記①~④の各分野で、最低4割以上取れていれば合格です。
注意ポイントは「正しいものを選べ」ではなく、「誤っているものを選べ」の出題になっており、簡単に言うと「間違い探し」の問題です。
講習を通じて各講師の先生がテストに出るポイントをマークする様に指示があるので、その部分だけを抑えておくと良いです。
簡単に言うと短期記憶力の勝負ですが、自身が無い方は1日目の学科が終わった後、1通りアンダーラインでマークした部分を復習しておくと良いかと思います。
4.実技(3日目)
6~8名程度の各グループに分かれて実技実習を行い、「酸素濃度測定方法」と「救急蘇生法」の2つの実習と、こちらも最後に手順通り出来るかの簡単な確認テストがあります。
①酸素濃度測定方法
机の左に置かれているのが「検知管」で右が「酸素濃度計」です。それぞれの機器を使用し、酸素濃度を計測する手順を学びます。
検知管による濃度測定の手順。
酸素濃度計による酸素濃度測定の手順。
班ごとに講師の先生から手順の説明があり、1人ずつ実際に計測を行います。
機器や器具を確認・操作しながら指差し呼称で確認しながら測定します。各手順通り進め、確認チェックが出来ればOKです。
②救急蘇生法
こちらも班ごとで、講師の先生を囲む形で説明を受けた後、1人もしくはペアで練習用人形に対して蘇生処置を行います。
簡単に言うと運転免許取得の際に自動車学校で行う救急処置の授業と同じような内容です。
手順に沿って指差呼称しながら状況の確認と対応を行っていきます。
先ずは正しい手順を講師の先生がみせてくれるので、その手順・指差呼称内容を短期間で覚えたあと、1人ずつ順番にテストがあります。
ゆっくりでもいいので、手順を思い出しながら指差呼称しましょう。
学科と違って眠くなる事はありませんが、とにかく短期記憶の勝負です。なぜその順番でその動作や確認をする必要があるのか、意味を理解しておくと覚えやすくなるかもしれません。
まとめ
今回は「酸素欠乏危険作業主任者 技能講習」について振り返りをしました。
講習全体を通して印象的だった事は、講師の方が「一息昏倒」というワードを何度も使用されていた事です。
空気中に約21%存在し、我々は普段の生活であまり意識することなく酸素を吸っています。
しかし、酸素濃度が極端に少ない空気(例えば10%以下)を吸うとどうなるかご存知ですか!?(ちなみに富士山頂の酸素濃度が約13.5%、エベレスト山頂が約7%)
私も受講前は知らなかったことですが、答えは「1息吸っただけで失神・昏倒する」です。(意識の無いまま、その酸欠の場所に居続ければ死亡)
血液中の酸素濃度が下がり、脳が慌てて血液を早く流そうとしてますます酸素濃度が下がって脳の機能が停止してしまうために起こると言われています。
酸素濃度の低い空気を吸うと、だんだん苦しくなるのではなく、突然意識不明になって倒れ、そのまま死んでしまいます。(高地トレーニングは徐々に体を慣らしていくため順応できる。)
普段あまり意識する事は少ないですが、実は注意してみると日常生活や仕事を行う上で様々なシーンに遭遇し、そして残念ながら毎年のように酸欠が原因の死亡事故が発生してしまっています。
そういった意味での備え・ちょっとした意識の変化で未然に防ぐことができる事故もあると思いますし、酸欠講習がその良い機会になりました。
またAEDを使用した救急蘇生法など日常生活でも起こる可能性のある事柄に対して理解を深めておくだけでも、役に立つと感じました。
- 学科 x 2日と実技講習 x 1日の合わせて3日間で実施される。
- 学科は2日目の最後にマークシート形式のテストがあり、実技も最後に簡単な手順確認のテストがある。
- 身近に潜み、且つ深刻な事故に繋がりかねない、酸欠に関する知識が得られる。
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