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【干し芋は高級品?】芋農家が干し芋の製造過程と値段が高いワケを解説!

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干し芋の製造過程と高い値段のワケを解説

今回は些か挑戦的なタイトルですが、干し芋造りも目途が立ったところで、銀篭園が今年行ってきた過程、土づくりから干し芋の製造、パッケージ化までの製造過程を解説させて頂きたいと思います。

今年掲載させて頂いたブログ記事、Twitterの投稿などを元に振り返ってみたいと思います。

また冬も本格化するなかで干し芋シーズンも到来した訳ですが、各方面でよく耳にするのが「なんで干し芋ってこんなに高いの?」という声。

〇〇円もしたのにこれだけしか入ってないよ!
高くて買えないからここ暫く全然食べてない!

確かにいい値段だと思います。干し芋農家が言うのだから間違いありません(笑)

国産の干し芋を中心に値段が高くなってしまう理由にはそれなりの理由があります。その辺も交えて干し芋が出来るまでの過程を解説していきたいと思いますので少しばかりお付き合い下さい。

目次

さつま芋の栽培~干し芋ができるまでを解説(約10ヵ月)

①初春

干し芋を作るには先ずさつま芋を作る必要があります。まず銀篭園の場合は開墾・土づくりから始めました。今年は2つの畑で耕作を行いましたが、一方の畑は元々お茶を栽培していた為、手作業での開墾作業を行う必要がありました。

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スコップでの手作業による開墾を約1ヵ月ほど続けて、やっと耕作ができる状況になりました。(ゼロというかマイナスからのスタートでした。)

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また開墾までとは行かないまでも、苗を植える定植までに草取りや施肥を行っておく必要があります。

実は銀篭園にはもう1箇所、第三の畑があるのですが時間的にも体力的にもそこまでは辿り着けませんでした。

②春

春の時期にさつま芋の蔓を育てます。苗が小さいのでビニールハウスで温めてあげる事と、毎日の水やりは欠かせません。

ここまで手作業が多いですが、もちろん機械化できる部分は効率化しています。草刈り機耕運機を購入し、農機具運搬用の軽トラックも用意しました。

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③初夏

若苗がある程度の大きさになった初夏にはいよいよ定植、苗を植え付けていきます。

畝立てまでは耕運機ですが、苗の植え付けやマルチシート(黒ビニール)の設置などは手作業です。

また銀篭園は無農薬栽培の為、害虫予防に神経を使いました。農業の研修会に参加し、天然由来の虫よけを作成もしました。(DASH村でやっていたようなやつです)

それでも葉っぱや芋が食べられる率は高い為、大手の生産者やメーカーは農薬を使用しているところが多いです。

④夏

夏の時期は蔓の成長が早く見ていて嬉しい反面、困ったことが2点。

Problem

  1. 蔓の成長と共に雑草の成長も盛ん
  2. 害獣(タヌキ)が出没

②に関しては資材を購入し、ネットを張って防御したので一定の効果は出たと思います。

①に関してはもう純粋に手作業で日々草取りをするしかありません。これはもう無農薬栽培の宿命です。猛暑の中、広大な面積の畑を手で草取りをします。ここで一度腰が崩壊します。

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草取りは大変ですが、芋の蔓も急成長をみせてくれる為、日々の成長が楽しみな季節でもあります。この時期にドローンで撮影もしてみました。

⑤初秋

夏~秋に掛けて大変な事が草取りとともに台風などの災害です。静岡県も巨大台風が直撃し、苗に多少のダメージはありましたが大きな影響はありませんでした。

それを乗り越えて秋も深まると苗が大きく成長し、収穫の時期になります。

⑥秋

立派なさつま芋が採れるととても嬉しく、これまでの努力が報われた気がしますが、全て手作業(スコップ)での芋ほりは完全に腰が崩壊します。2度目の崩壊です。

さらにこれからキュアリング(保管し糖度を上げる工程)と干し芋への加工が待っています。まだまだ気は抜けません。

キュアリングは各生産者ごとにやり方は様々ですが、おおよそ1ヵ月前後は倉庫で寝かせます。その後、お芋を綺麗に洗ってから蒸す作業に入ります。

⑦冬

蒸す時間や方法も様々ですが、銀篭園では2時間ほど蒸してから1個ずつ丁寧に手作業で皮むきをします。

その後、通称「ペンペン」と呼ばれるスライサーを使用し、手作業で切っていきます。

一部抜粋:七福ツール

切った芋を並べて数日~約1週間程度(天候次第で変わります)天日干しをします。大手は食品乾燥機を用いる事も多いようですが、銀篭園は全て天日干しをしています。

この時期は天気予報に非常に気を使います。朝晩の片づけはもちろん、急な天候の崩れに備えて常に待機が必要です。

無事に乾燥まで終わると、手作業で1袋ずつ袋へのパック詰め作業を行い、発送が出来る状態のパッケージに整えます。

干し芋が高いワケ

ここまでくると何となくお察し頂けるかと思いますが、とにかく手作業が多い=人件費が掛かるという事が第一です。

大手のメーカーさんは広大な土地で大型トラクターで耕作し、農薬による草取りの手間が省かれるなど栽培効率は良いですが、芋の皮を剥く、切る、袋詰めする、などの作業は結局人の手によるものになります。

銀篭園のように天日干しの場合、朝晩の取り込みはもちろん、裏返したり管理する作業もあります。また日中も急な雨に備えて殆ど外出もできません。

第二に設備投資。今年銀篭園で購入した軽トラックや耕運機、草刈り機などの費用やメンテナンス・燃料代、さらにビニールシートや害獣予防のネット、干し芋加工用器具(蒸し器やスライサー、コンテナ、干し台、保管倉庫)など挙げるとキリがないほど多くのツールを必要とします。

第三に特に無農薬で作る場合ですが、害獣や害虫に食べられる率が高く商品にできる芋が少なく、歩留まり率がかなり低くなってしまいます。完全に効率は悪いですが、銀篭園の想いに書かせて頂いた通り、安全には変えられないものだと思っています。

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まとめ

農業は高度な知的生産活動という話を聞いたことがありますが、ぎんろーも完全に同意です。

またどうしても天候に左右される部分が大きいです。

さつま芋は基本的に年1回しか収穫できません。という事はチャンスは年1回。猛暑で苗が枯れてしまっても、台風で芋が水没してしまってもチャンスは1度きりです。

例えば今年猛威を振るった台風24号の影響により静岡県の農業被害額は32億円に上るとの発表がありました。(静岡新聞

ぎんろーも注目していた磐田でカフェも運営されている新進気鋭のイチゴ農家「くりみ苺園」さんは今シーズンは完全休業を発表されました。

また、今年上手くできたからと言って来年も同様に出来るとも限りません。作物は自然の恵みですので、今しか食べられない貴重なものだと思います。

農園カフェやレストランを中心にグルメ記事を書かせて頂いていますが、背景にある生産者の苦労やたゆまぬ努力を思い描きながら、常に生産者への感謝を忘れずに頂きたいと考えています。

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この記事を書いた人

日本最古級の干し芋農家『銀篭園』。
干し芋の発祥地『静岡』で江戸時代から12代続く伝統農家です。
こだわりの干し芋を心を込めて皆様にお届けします。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • Twitterから来ました。まさに気になっていたことが詳しく書いてあって、納得しました。やっぱりちょっと高級ですが、これからも、干し芋を作ってくださるみなさんのことを考えながら、噛み締めて食べたいと思います!

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